今、本を朗読で聴く「オーディオブック」の人気がじわじわと上昇しています。中には著名な俳優・声優が担当した、ラジオドラマのような作品もあり、人気もうなずけるわけですが、本を読むのではなく、聴くことにより生まれる効果の違いもまた、注目の理由の一つです。
オーディオブックについて
本を聴く。それ自体はわりと昔から存在していて、欧米では50年くらい前から長いクルマ移動の際に、ラジオや朗読を聴く文化が定着していました。
カセットテープが普及してから、オーディオブックのニーズはさらに高まりを見せ、書籍の朗読のほか、耳で聞く学習法としても人気を博しました。
「読む」と「聴く」
脳には視覚野と聴覚野があり、脳内で役割が分かれています。当然のことながら、紙の本は視覚から入って処理されるのに対し、オーディオブックは聴覚野で処理されます。
つまり、同じ本を読んだとしても、視覚から得られるものと聴覚から得られるものとは、それぞれ異なる刺激を、脳に与えることができるのです。
実は視覚野に比べると、聴覚野は解明されていない部分が多いとされています。脳の聴覚野から伝わる海馬への記憶回路や、そこから湧き上がるイメージ力は未知数の可能性があるのです。
また、視覚野のそれとは異なるインプットは、言語としての記憶以外に口調や声色といったものも同時記憶されるので、多くのシナプスの結びつきが期待され、記憶を呼び起こしやすくなります。
これは字面を追いながら聴くことによって、さらに強力なものとなるでしょう。
口伝えで伝わる落語のように、耳で聴く本は、読む本とは違った味わいをもたらせてくれるというわけです。
- オーディオブックが人気のわけ
- オーディオブックって何がいいの?
- どう活用すればいいんだろう?
オーディオブックの人気5つの理由
1. 長い本も読み切れる
2. ながらで読める
3. 時間の有効活用ができる
4. 再読が容易
5. イメージが広がる

1. 長い本も読み切れる
通常の読書の場合、ぶ厚い本だったり、何巻も続く壮大な話などは読了までに集中力が切れてしまうことも多いですよね。
また、積ん読スタイルで、一向に読み始めることができない本も増えていきがちです。
また、読書では、難読な漢字や覚えにくい名前(外国書などに多い)、凝った言い回しによる読み違えなど、スムーズに読み進めにくい部分があります。
しかし、オーディオブックの場合、スタートさせればウルトラスムーズ。
サクサクと読み進めることができます。漢字の読みや、人のなまえで滞ることもありません。
聞き逃してしまっても巻き戻せばいいのだから、気軽さは紙の本の比ではないのです。
これはオーディオブックを聴く機器の操作法や機能を覚えることで、さらに快適に聴けるようになってきます。
そして聴いてさえいれば、長時間の本でも必ず読み終わります。聞き流して何度でも聴く(読む)ことができます。
2. ながらで読める
聴く、ということは見ることが自由になります。
動画や本と違って、目を動かして良いのです。動きながら、読めるのです。
「ながら読み(聴き)」ができるのは、オーディオブックの大きな美点です。
掃除をしながら、様々な景色を見ながら、散歩しながら、運動しながら、料理を作りながら・・・場所や姿勢の束縛から開放されるのです。
3. 時間の有効活用ができる
当然ですが、どこでも聴けるということは、時間の有効活用に繋がります。
さらに、倍速で聴けば、時間は半分に短縮されます。
また、倍速で聴くことは脳の活性化にも繋がります。耳を鍛えることが脳に与える影響は大きく、学習のスピードを上げることが期待できます。
満員電車で好きな音楽を聴くのも良いですが、好きなオーディオブックを聴く習慣も知的で素敵です。
ビジネス本や啓発本を聴いて、モチベーションを上げていくことで、仕事にも役立つはずです。
散歩で必ず聴く癖をつければ、あっという間に一冊読み終わってしまうことでしょう。
4. 再読が容易
カセットテープの時代からオーディオブックは存在し、愛読されてきましたが、昔は早聞きする方法はなく、音質を落とさず速度を上げるにはかなりの技術が必要でした。
しかし昨今は進化をとげ、普通に倍速でも音質をあまり落とさずに、簡単に快適に聴けるようになっています。
気に入った本は何度でも読み返したくなるものですが、オーディオブックは再読の場合もボタンひとつです。
章ごとのダウンロードをすることで、さらに便利に聴くこともできます。
5. イメージが広がる
小説などは、有名な役者さんが読んでいるものもあって、ラジオドラマとも呼べる、素晴らしい臨場感、緊迫感が伝わってきます。
むしろ三国志などは、オーディオブックで読むことを強くお勧めします。

あまり脚色されてしまうと読書としてどうなのか?という不安のある方もいるかもしれませんが、過去、何作も聴いてきた経験からすると、それは杞憂だと言えます。
どのオーディオブックも著述に忠実に読まれていますし、脚色は控えめです。
そして、何よりも素晴らしいのは、視覚障害の人たちが読むことができるということです。オーディオブックの最大にして最高のメリットとは、これに尽きるでしょう。
オーディオブックの弱点?
良いことづくめのオーディオブックですが、弱点では?と言われている部分もあります。ですが、実はそこにこそ、オーディオブックの真価があったりもするのです。
1. 声色が気に入らない?
2. 図解や表を多用している本は?
3. アンダーラインを引いたり、付箋をつけることができない?
4. 速読や拾い読みができない?
5. マンガは聴けない?
1. 声色が気に入らない?
オーディオブックの場合、声色は重要です。聴き心地のいい声、というのは存在しますし、好きな声質というのもあります。どうせなら、気に入った声で聴きたいものです。
オーディオブックのほとんどは試聴することができるはずですし、そもそもオーディオブックは聞きやすい話し手が選ばれています。が、長時間聴くとなると、声色は大事です。
ただ、多少興味が薄い本でも、気に入った話し手の朗読ならば聴いてしまう、といったメリットもあります。装丁や挿絵が気に入って購入する本のようなものですね。
オーディオブック文化がより定着していくことで、同じ本をいろんな話し手で読むといった展開が期待できるかもしれません。同じ本を好みの男優や女優で聴き分けられたりしたら、楽しさ倍増ですね。
2. 図解や表を多用している本は?
ほとんどのオーディオブックには図版の用意があります。
普通の本では、図版の解説が次のページに跨ってしまうケースがよくあります。また、登場人物の名前や相関図は、いちいちページを戻して確認しなければなりません。
しかし、オーディオブックでは、用意された図版や相関図を見ながら読む(聴く)ことが可能です。
外国文学の馴染めない登場人物の名前や、相関図などは、見ながら読み(聴き)進められると理解度が段違いです。
「三国志」や「罪と罰」のように、様々な人物や、覚えにくい名前がたくさん出てくるような長編も、スムーズに読み進められるのです。


図解や表が多い本は、不向きであるようで、実はメリットだったりするのです。
3. アンダーラインを引いたり、付箋をつけることができない?
オーディオブックが聴く本である以上、物理的な行為ができないのはデメリットとなってしまう部分です。
しかし、今や聴くことができる場合、喋ることができます。たいていの再生機器には「録音機能」が存在していますから、ボイスメモを録音して残すことは可能です。
4. 速読や拾い読みができない?
速読も拾い読みもできませんが、速度を上げて聴くことが可能です。
紙の本であっても、速読や拾い読みが適さない本もあります。文章を味わう小説や随筆などが良い例です。
速読はトレーニングが必要ですし、その効果も未だに疑問視されている部分があります。
一方で、速度を上げて聴くことは、比較的簡単にできます。
5. マンガは聴けない?
その通り。とても良い着眼点です。
ただし、ノベライズされたマンガとなれば、話は違ってきますね。
マンガのセリフやナレーション、SEをオーディオブック化して販売することで、マンガの楽しみは倍増すると考えられます。
これだけマンガ文化が成熟している日本ならでは、これはちょっとしたビジネスチャンスかもしれません。
まだまだ魅力がいっぱい潜んでいるオーディオブック市場。
あなたもお気に入りのオーディオブックをぜひ見つけてみてください。
睡眠学習
かつて、睡眠の際に講義のテープなどを聴いて眠ると無意識に脳に刷り込まれる、という睡眠学習法が話題になったことがありますが、全く知らないことを寝ながら聴いていても効果はないようです。
しかしながら、復習においては効果もあるらしいので、英語学習など、やってみる価値はあるかもしれません。
次回はオーディオブックを聴くのに便利なDAP「デジタルオーディオプレイヤー」を紹介します。今、本を朗読で聴く「オーディオブック」の人気がじわじわと上昇しています。中には著名な俳優・声優が担当した、ラジオドラマのような作品もあり、人気もうなずけるわけですが、本を読むのではなく、聴くことにより生まれる効果の違いもまた、注目の理由の一つです。
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