好評シリーズオススメ絵本。今回は高学年向けの厳選3冊をご紹介します。
みんなのベロニカ
ロジャー・デュボアザン作/絵 神宮輝夫訳 童話館出版
ロジャー・デュボアザンは没後40年になりますが、その作品の愛らしい魅力は今もってなお輝いています。
「しろいゆき あかるいゆき」でコールデコット賞を受賞し、この「ベロニカ」シリーズや、妻のルイーズ・ファティオと共に描いた「ごきげんなライオン」シリーズなど動物が主役の絵本でもよく知られています。
かばのベロニカはパンプキンさんの農場へやってきました。
ベロニカはその農場がとても気に入ったのですが、すでに住んでいた、たくさんの動物たちからはあまり歓迎されていないようでした。
そのうち、ベロニカはだんだん元気をなくしてしまい、外に出てこなくなってしまいます。
ほかの動物たちはベロニカはどうしたのか、気になってしかたありませんでした・・・。


デュボアザンの描く動物たちは、とても表情豊かです。それも顔だけでなく、シルエット全体が。
そしてどんな動きをしていても、かばはかばのままですし、馬は馬、牛は牛のまま、動物の骨格や特徴は一切破綻せずに、それでいてとても生き生きと、可愛らしく描かれています。
サッサッと簡単に描かれているようなペンの線一本一本が、キャラクターを表すために全て正しい位置にあるのです。
神の道化師
トミー・デ・パオラ作/絵 ゆあさ ふみえ訳 ほるぷ出版
トミー・デ・パオラは大学で絵を教えながら260冊以上の絵本を手掛けました。
緻密に構築されている絵作りはどれも素晴らしく完成されており、丁寧に描かれた画風は温かみと可愛らしさに溢れています。
服装や小道具などの細かいディテールからは、こだわりと研究熱心さが伝わってきます。
この「神の道化師」という作品はデ・パオラ自身が聖フランシスコ教会に属していたこともあったことから、宗教色の濃いものとなっていますが、みなしごだったジョバンニの一生を華やかで且つ切なさも交えて綴った感動作に仕上がっています。
みなしごのジョバンニは、なんでも空中に投げてクルクル回すことができる得意技をもっていました。
ジョバンニはその技を生かして、まちに来ていた旅芸人の仲間に加わり、道化の衣装で喝采を浴びる人気者となりました。
その後、独り立ちして、街を巡っていたジョバンニでしたが、年月がたち、年老いて芸にも陰りが見えてきました。
そして、ついにあれほど得意だった技を失敗する日がやってきて・・・


トミー・デ・パオラは2020年の3月30日に85歳で亡くなりました。心よりご冥福をお祈りします。
せかい いち おいしいスープ
マーシャ・ブラウン作/絵 こみや ゆう訳 岩波書店
1918年米国ニューヨーク州ロチェスター生まれ。ニューヨーク市立図書館に勤めた際のお話会がきっかけで、絵本を描き始めたというマーシャ・ブラウン。
1954年『シンデレラ―ちいさいガラスのくつのはなし』(福音館書店)
1961年『もとはねずみ…』(童話館出版)
1983年『影ぼっこ』(ほるぷ出版)で3度のコールデコット賞を受賞しています。
2015年逝去。
戦争が終わり、故郷へ帰る途中の三人の兵隊。
腹べこでクタクタだった三人の前に村の灯りが見えてきました。何か食べ物と寝る場所がないかと尋ね回りますが、どの家からも断られてしまいます。
すると三人は「石のスープ」を作ると村人に触れ回ります。
「石からスープができるのなら見なければ損だぞ」そう言って村人たちが集まってきて、石のスープ作りが始まります・・・


村人が兵隊たちの口車に乗せらていくお話ではあるのですが、誰も損をしないWin-Win の形で終わります。
まんまと口車に乗せらているようで、嬉々として自ら口車に乗っていっているような感じも漂います。人のそういうノリの良さという部分は、可愛くもあり楽しく幸せに思う瞬間ではあります。
おすすめ絵本は数多ありますので、またご紹介しましょう。
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